Mogicのかんがえをきく

Mogicの考えをお届けするため、代表にインタビュー。
今回は、Mogicならではのクリエイティブについて訊いてみました。更に、濃厚なロングインタビューになっています。

第三回

クリエイティブをきく

クリエイティブは
自分たちの能力や知識の限界のちょっと先で生まれる

手に取れるクリエイティブ

作り手の気持ちをトレースするために自分たちで作ってみる

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1回目、2回目のロングインタビューで教育についてお話をうかがってきましたが、今回はガラッと変えてクリエイティブについてお聞かせください。事前に四つのポイントを考えてきました。
一つ目は、「手に取れるクリエイティブ」についてお聞きします。MogicはIT企業ですから、プログラムやウェブデザインといったデジタルな制作物が中心です。ですが、なぜモノとしてのカレンダーやノベルティを社内で作っているのでしょうか?

山根

一般的な会社だとちょっとロゴを入れたり、色替えぐらいで済ませるのに、ゼロからアイデアを出して、素材を選び、デザインを作って、印刷に出して、検品して、梱包して、発送までをなぜ自分たちでやるのかということですよね?

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そうです。社内の人がやると時間がかかり、コストもかかるので外部の専門家に頼んだ方がいいのではないかと疑問が湧いてきます。

山根

これは、クリエイティブというものをどう捉えているかに関わっているんでしょうね。ちょっと遠回りになりますが、現在僕らが置かれている時代の背景からいってみます。
現代はモノがあふれてますよね。だから、モノは作るより買うほうが簡単です。1年のうちゼロから自分の手で新しいものを作るという経験がどのくらいあるかなって数えたら、3個もないと思うんですよね。
新しいアプリをインストールしてみたり、ちょっと模様や形を変えるぐらいはあるかもしれないですけど、ほとんど誰かが作ったものを組み合わせています。組み合わせることが悪いってことじゃないですよ、それはそれで便利な世の中ですから。
ただそれが普通になったとき、何かを作ろうとする人の気持ちやプロセスってどうやって知ればいいのかなと思うわけです。本当の意味でのゼロから作るのはできないのですが、できるだけゼロベースに近いところから作るようにしてみると。
買うだけだと、これをなんで作ろうと思ったのか、どういうふうに表現したかったかなというのになかなか気付きづらい。作り手の気持ちをトレースするために自分たちで作ってみているんでしょうね。
時間をかけて一つずつ自分たちはどうしたいのか、どんなものが心地いいのかを確認するために、ゼロから作ろうとしている感じですね。

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なるほど。ただそれはデジタルでもできそうですが、あえてリアルで専門分野と違うモノを作るのに何か意図があるんでしょうか?

山根

デジタルだと慣れてしまっているので、やりづらい部分があるんです。一番良いのは全く知らない分野でうんうん考えながら、スキルを身につけながら、ノウハウを蓄積して、手を動かすようなモノがいいです。
得意分野だと見落としがちな、素朴な疑問を積み重ねて、小さな挫折や停滞をくり返して、もがくプロセスがいいので、デジタル以外が好都合なんです。
こういうことを日頃からしておくと、いざビジネスで新しいことに挑戦しよう!といっても素早く動けます。全く知らない分野にトライし続けていますから、失敗耐性、停滞耐性、もがき耐性が身につくんでしょうね。

直接話さないけど関係する人に敏感でありたい

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自社でノベルティを作る意義はそういう教育に目線があるんですね。それでは、1Fのディスプレイはどうでしょう?ノベルティと違って、クライアントに直接関係ないものですが、あれを自作するのはなぜでしょう?

山根

Mogicのオフィスは、著名な建築家 坂さんの建物に入っています。建物だけでも十分キレイなんですけど、なぜディスプレイまで手間暇かけてしているのかということですよね。ビジネス的に意味がなさそうなので、しなくていいんじゃないかという話だと思います。

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はい、そうです。季節ごとにディスプレイをキレイに飾っても売上にならないし、ましてIT企業として価値にはつながらなさそうなのですが。

山根

しなくてもいいけどしたほうがいいことって、人生でいっぱいありますよね。旅に出る、本を読んでみるとか。やらなくても生きていけるじゃないですか。たっぷりご飯を食べて、ぐっすり寝て、ずっと安全だったらいいですね。
その上で、しなくてもいいことをしてしまう理由。それは今日の、この一瞬がちょっと楽しくなるとか、少し気持ちが動くとか、新鮮になるというか、励まされた気持ちになるとか、そういうポジティブな変化を求めているからだと思います。
Mogicの社内は、みんなで楽しめるイベントがたくさんあります。はたらく場所を少しでもポジティブに変化させたいからです。ただし、そういった変化は社内だけにとどまりやすい。
メンバが感じている楽しさを、歩く人に100分の1でいいからシェアできると面白いんじゃないかなというアイデアですね。なんとなくポジティブな変化が遠くまで伝わっていくといいなという感じです。
僕らはeラーニングを含めて、自分たちで考えてサービスを作っています。世界中、日本中の見知らぬ人にサービスを使ってもらい快適になってほしいという想いがベースにあるんですね。
ならば、そもそも僕らは社外の人とのコミュニケーションに繊細じゃないといけないじゃないですか。直接は話さないけどどこかで関係する人に敏感じゃないといけない。
ディスプレイ一つとっても、そのための練習なんです。近くの道路を歩いている見ず知らずの人に表現することで波動を送り、いいね、悪いねとフィードバックをもらう。
フィードバックがなければ悲しいですが、おかげさまで年始にオフィス前でカレンダー配ると即日でなくなります。アンケートを書いてくださって、ディスプレイを楽しみにしているって声がたくさんあります。
ディスプレイを作るメンバのトレーニングになるのはもちろん、他の人も面接でディスプレイをほめられたら、やっぱり良いよね、Mogicらしさだよねという気持ちになります。
ディスプレイを飾るというのは、Mogicにとって見知らぬ人にシェアしていくという文化を表現している場なんでしょうね。

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そんな深い意図があったのですね。オフィスに来られる方のためにオシャレな雰囲気にしているのかなと思っていました。伝える力を養う場になっているのですか。

山根

本当は、後付けの理由かもしれないですけどね(笑)。

手に取れないクリエイティブ

積み重ねとしてチームのクリエイティブというものが存在している

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続いて、2つ目は「手に取れないクリエイティブ」ということをお聞きします。手に取れないものとしてITサービスというと、ちょっとクリエイティブとは遠い印象です。ですが、コーポレイトサイトや社内の会話でクリエイティブという単語がよく出てきます。ITとクリエイティブ、このつながりをどう捉えられているのでしょうか?

山根

昔、インターンの面接をしていて「ITなのにクリエイティブって言っているのは珍しいですね」と言われたことがあります。ですから、ITは基本的にあんまりクリエイティブと重ならないんでしょうね。
コンピュータでプログラミングして、システムが動いていて、チャットでやりとりして、データ分析で効率化ばかりしてる雰囲気。たしかに一般的に思われるクリエイティブとはちょっと遠そうです。
じゃあ、僕らがクリエイティブとは何かというなら、やっぱり人が見た時に「あ、これ面白いかも」「自分も何かしてみたい」となるものだと考えています。インスパイアという英語の言葉がありますけど、ふっと自分の中に風が吹き込んでくる感じ。突き動かされる衝動を発生させる仕掛けや場づくりをクリエイティブだと思っているんですね。
クリエイティブってITに限らずなんですけど、ある作品を見て「わあ、それクリエイティブですね。クリエイティブな才能が詰まっていますね」と完結するのもありますが、それを見た人が影響を受けて「もっとこうやりたいよ」って提示して、それに対してまた他の人が「ああ、いいじゃん。もっとそうやりたい」という、積み重ねとしてチームのクリエイティブというものが存在している気がしますね。

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単一のクリエイティブ作品というより、メンバ同士が高め合うプロセスをクリエイティブとする感じですね。それは目に見えないものを作るIT分野でどうできるかが気になります。具体的にイメージするために、eラーニングサービスLearnOに限っていくとどうでしょうか?

山根

キャンペーンを例にとります。先月に「LearnO、6月限定で六花亭の六花撰と6GBを先着6社にプレゼント!」というプレスリリースが出ています。6月のプレスリリースだから6に引っ掛けたゴロ合わせですね。ゴロ合わせなんかしなくてもいいのにしちゃってる。
あのリリースはもともと、動画の配信容量5GB増量キャンペーンはどうだろう?というアイデアから始まりました。でも、それじゃあパンチが弱いよねという意見が出て、期間限定で価格を下げるとか、簡単なコンサルティングをつけるとか話して、ちょっと盛り上がってプレゼントをつけたら面白いじゃんとなりました。北海道出身者がメンバにいたので六花亭のお菓子って美味しいよねとなって、じゃあ、6月に六花亭の6GBの先着6名にしたらタイトルが映えるよねと決まったんです。

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たしかに5GB増量より、6月6GB六花亭の方がインパクトあって目を引きますね。効果はどうなんでしょうか?

山根

いつものプレスリリースはターゲットが明確なんですけど、あれは違いました。eラーニングに興味ない人にも「このキャンペーン面白いじゃん、このリリースってどんな会社が出してるの」というポジションで刺さればいいのかなと。
間口を広げることも重要じゃないですか。eラーニングに関心がない人がオッと目にしてくれてクリックというアクションがあるだけで、少しはクリエイティブな要素はあるのかなと思っています。

クリエイティブのレベルアップにはチームが乗れる流れを作る

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ITサービスを運営する上では、どうやってクリエイティブのレベルアップに気を配っているのでしょうか?

山根

僕らのクリエイティブの定義は、何かを見た時に「お、使ってみたい」「ああ、これやってみたい」というやり取りの積み重ねなんですね。小さな積み重ねとトータルのバランスが重要です。なので、チームがうまく流れに乗れるようにします。
最初にプランナーが面白いキャッチフレーズで企画を作ってみた。それに触発されてデザイナーがちょっと遊び心のあるデザインを作ってみた。「ああ、それいいね」って、みんなが盛り上がってエンジニアが「じゃあ、こんな機能も作ってみたいよね」と、そういう細かな積み重ねのバランスですね。
積み重ねのバランスが良ければ、メンバのモチベーションが保たれて、スピードが出て、良いものができて、トータルとしてのクリエイティブが完成するように感じます。
やっぱり大事なことは、他の人に「何かちょっと面白いじゃん」って思ってもらうこと。じゃないと、次の人が動けないじゃないですか。とある会議で、企画がすごくつまらなくてどうしようもなくダメだとするじゃないですか。そしたら、次の会議でデザイナーがいいデザイン持ってこられないですよ。みんながちょっとずつ、ちょっとずつ面白さを積み重ねていくという作業の延長線上にありますから。
だから一つ一つの会議でちょっとみんなを驚かせてやろう、こう楽しんでいこうよというのを大事にしてるんです。

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それは理想的に聞こえますが、すべてがうまくいくわけじゃないですよね。うまくいっていない場面は過去にあったのでしょうか?

山根

よくありますよ。誰かのちょっと面白いなという基準は、みんなが面白がるモノサシと違うことがあります。ふざけて面白いのか、ビジネスとして面白いのか、今まで見たことがないから面白いのか、パロディだから面白いのかとか、面白さもいろいろあるわけで。
必ずしも誰かが出した面白さが全部使えるわけじゃないので、プロジェクトマネージャがどこかでガシガシ削ぎ落とさなきゃいけないんですね。これはこのチームにフィットした面白さだなとか、ちょっと流れから外れているからうまくカットしなきゃなとか。一方で、アイデアを出す方としてはすごくいいプランだ!と自信あったけどパッと捨てられたら嫌になりますから。
あと、プロジェクトマネージャがこの方角でアイデアを出さないとダメだよと指示を出すんですけど、それぞれが面白がれる範囲は決まっているのでみんながうまく感性に引っかかるようにしないと、チームのテンションが上がらなくなります。メンバの個性をしっかり把握して進めないと、最終的にプロジェクトのスピードは落ちてくるんですね。

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雰囲気の微妙なさじ加減がクリエイティブをずっと上げていく秘訣なんですね。

山根

やっぱりアイデアって、最初はみんな出せない。でも、出さないといけないから無理に出していく。出したら出したでアイデアって100個も200個もいらないから、ほとんどが消されていく。さらに、他人のアイデアに乗っかってプラスを重ねていかなきゃいけない。
そんなプロセスは、きちんとトレーニングしないとできないんです。トレーニングしてないと「私のアイデアが捨てられた」「俺のアイデア出したんだけど勝手に加工された」とか、そういうトラブルが起きやすくなります。

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アイデアと個性が密着していると、自分を否定された気になるのは分かります。

山根

手順書みたいに、あらかじめプロセスやゴールが分かっていればケンカになりません。分量が多すぎると修羅場になることはありそうですけど。
だけど、みんなが議論して面白がって作っていくものはとにかくベクトルがバラバラ。最初まとまって見えてもトータルで崩れることがあります。
ですから、バランスを見ながら、それぞれの良さを活かしつつ、組み上げたものに何を乗せたら面白くなるかを考えつつ、フワッフワッと持っていく感じですね。

やり方が決まってないからいつも新鮮に作れる

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前提が変わっていくことを理解しながら、新しい発想を組み入れてバランスをとる。メンバにとって難しいプロジェクトになりますね。

山根

このやり方だと最初から最後までシナリオがないんです。その時のメンバの構成やコンディションで言うことが変わってくるので。変わり続けるものをうまく捉えて、その瞬間にしかできない組み合わせを試します。だから難しい。
逆にいえば、毎回が楽しいですよ。飽きることはないです。やり方が決まってなくて、メンバの言うことが変わっていくから新鮮に作れる。
でも、何も考えずにメンバの楽しさだけで追求していくと途中で壊れちゃいます。一回メンバが仲違いすると、もう戻らないじゃないですか。だから、やっぱりいきなりやらせずに、4人でやるなら4人の信頼関係をうまく作っていって、30%の信頼関係に議論を重ねながら50%、60%とか徐々に高めていくんですね。

クリエイティブのつくり方

アイデアはとりあえず今出そう、Mogic流アイデアリレー

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三つ目は、「クリエイティブのつくり方」としてアイデア出しを中心に聞かせてください。Mogicのあらゆる定例でアイデアが出ています。どうやって自然とみんなからアイデアが出るようになるのでしょうか?

山根

とりあえず、いま出そうよと。後でアイデアを考えて1週間後に持ち寄るより、いま出しましょう!そこはいつも変わらない(笑)。
例えば、ノベルティを作りたいとします。最初にどんなノベルティを作りたいか、みんなイメージがぼんやりしているから、一番経験の少ない人から順番にアイデアを出していきます。一人が発言したら次の人、また次の人とつないでいって、最初の人に戻るというのを何周もくり返すリレーです。
経験が少ない人はとっさにアイデアが浮かばないので、とりあえずどこかで見たような硬いアイデアを言うんですね。次の人はちょっと慣れているから、少しひねったアイデアを言って。経験があればあるほど、最初の人が思いつかないアイデアを言っていくので、そういう流れがあって自分のところに戻ってきます。
そうすると最初の人は、どうもそういう風に遠くまで考えたアイデアを出してもいいんだと学んでいます。となると、最初よりちょっと富んだアイデアが言えたりします。アイデアの出し方をいろんな個性からちょっとずつ学んでいきます。
そもそも普通に暮らしていると一年間で何回アイデアを出すでしょうか?数えてみたら、3回あるかないか。実際ほとんどないんですね。

アイデアの数を出すことを体で分かるようになるといい

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おっしゃるとおり、家族で揃ってアイデア出しなんて想像できないです。

山根

日常でアイデアを出せという機会がないわけですから、トレーニングしないとできません。しかも、アイデアを大事にするんじゃなくて、ダメそうなのは捨てていく。出しては捨てる、出しては捨てるというのを覚えていく。そうしないと、いつまでも自分のアイデアを温めることになります。
チームでは必ずしも自分のアイデアが生きるとは限らないのでとりあえず数を出すようにする。それを体で分かるようになるということです。

ズレが起きたら新しい着地を発想しなおす場合もある

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どうしてもアイデアが出なくて頓挫したプロジェクトはなかったのですか?

山根

マイクロテックチーム(※小さなITサービスを定期的に出すプロジェクト)はよく途中でプロジェクトが頓挫しますね。半年に一回は頓挫しています。ですけど、残念ながらアイデアが出ないということはないですね。アイデアが出ても、うまく育てるのに失敗して停滞することばかりです。

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そうはいってもマイクロテックは必ずリリースされています。途中でプロジェクトが止まっても最後まで突き進めるコツみたいなものがあるのでしょうか?

山根

最初のアイデアが良くても途中で止まる場合、どこかで本質的な部分を無意識に変えてます。作業フェーズで自分たちが作りやすい方向に変えると、最初の面白さが損なわれるんです。
アイデアは自由に出せるけど、作り始めると物理的な制限がかかるじゃないですか。すごく時間がかかる機能だったり、難易度が高すぎて今の自分だとできないことだったり。そうなると簡単に実現できる方を選ぶんですね。
でもそれってきちんと見極めないと、最初のコンセプトからズレる。一歩目のズレは分かりづらくて、気がついた時にはものすごいズレちゃってる。プロジェクトがかなり進んでから、コレどうなんでしょうって聞きにきますけど、実際そこまでくると最初に描いたものは作れません。だから、すでにできたものをじっくり見定めて、新しい着想を得ようとしますね。

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最初のクリエイティブなアイデアの積み重ねがダメになったら、ゼロに戻してスタートしないのですか?

山根

もう50%作ったものをゼロにするのはよっぽどなので。「仕方ない。最初のゴールじゃなく新しいゴールに作り直そうよ」と話します。
そもそも最初から厳密なゴールは作っていないので、途中でやり方を変えちゃう不真面目さはありますね。メンバがそういう変化もアリなんだと覚えてくれればいいんです。

会議中ちょっとふざけたこと、はみ出た小話をする

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ちょっと話は戻りますが、クリエイティブなことが苦手なチームがあった場合にどんなアプローチをしてアイデアや発想をうまく出せるようにするのですか?

山根

僕らの考えるクリエイティブはチームであって、一つの才能による大きな作品っていうクリエイティブじゃないので、苦手な人でも多少はできるようになります。思いついたことを冗談めかして話して、みんながいいねって乗っかるぐらいのものですから。
ですが、そういうユーモアもダジャレも言えない人がいたらどうするかっていうことですよね?

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そうですね。自分の意見を言うのにも戸惑う人がいたらですね。

山根

自分の意見は言えなくても、話を聞いて面白い、面白くないは分かりますよね。面白い話ならクスッと笑顔になるか、ちょっと体が動きます。もともと人は楽しいことや面白いことは好きで、何らか感情が動くはずなんです。
でもそれを自分がやるのは別問題ということです。面白いものを受け取れるけど、自分がどう出すべきかは分からない。だったら、なぜ分からないのかということです。予想ですが、無意識に「正しいことを口にする。間違ったことは言わない」という論理があるように思います。
もし正しいことが最優先なら、誰かに面白いことをいったり、楽しませるのは難しくなりますね。正しいものからズレることでおかしさが生まれ、いつもからハズれてるから興味が湧きます。正しいままでは、カッチリした話し合いにしかなりません。
なので、会議中にちょっとわざと正しくないこと、ふざけたこと、はみ出た話をしていきます。そんな話してもいいんだという場面をくり返して、感覚の幅を広げていきます。
そうすると、会議は真面目で正しいことを言わないと怒られると思ってたけど、どうやらそれでも怒られないんだって肌で分かってくるので。タイミングを見計らって、ちょっとふざけやすいテーマをポロッと投げていく感じです。

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自然とふざけやすい空気感を作っていくんですね。

山根

例えば、チームに新しいカレンダー作りでアイデアを出してくださいとお題を投げました。そこは非常に頭の固いチームでどこかで見たことあるようなアイデアしか出せなかったとします。
じゃあ、どうしますか?と言われたら「とりあえずアイデア出しは置いておいて、粘土を差し上げるので粘土でカレンダーを作るとしたらどんなカレンダーをつくりますか?」というテーマを投げてみます。あとは「手帳とカレンダーを合体させるとしたらどんなカレンダーになりますか?」「絵本みたいなカレンダーってどんなカレンダーだと思いますか?」とか、適当なお題を投げます。
要は、カレンダーはこれが正解!という所からちょっと外れた設定をすると目線が変わります。粘土でカレンダー作る、手帳にカレンダー組み込む、絵本っぽいカレンダーって何だろうって考えたら、ちょっと広がってくるじゃないですか。
そうすると、必ず誰かがポロッと変なこと言うんですよ。「ああ、それ面白いじゃん」って言ってあげるんですよ。どうもそれが面白いらしいぞってなってきます。
そういう風にこれは面白いらしいぞ、あれは面白くないんだという感情のラベル付けが結構大事です。ちょっとずつ、ちょっとずつ常識を崩しながらコンディションを整えていく。
ただ、そのくらい難しいチームだと一回だと出せないので、1カ月とか2カ月とかかけますね。二回、三回と少しずつレベルを上げていって、いつの間にかできるようにするしかないかなと思いますけどね。それでもダメなら諦めますね(笑)。

代表個人のクリエイティブ

クリエイティブは自分たちの能力や知識の限界のちょっと先で生まれる

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最後に山根さん個人にとってのクリエイティブを少し聞かせてください。いろいろつくられていますが、個人で考えるクリエイティブで何かありますか?

山根

僕の中でクリエイティブっていったら、自分なりにやり始めてよく分からないけどワクワクする楽しいことだと思ってます。最近だと、ビーツやコールラビといったマニアックな野菜をタネから育ててみたり、グラフィティのテクニックを使ったバースデーカード作りとか、あれこれ思いついたらやってます。

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すべて手作りなのですか?

山根

そうですね。受け取る側はそんなカードを贈ってくるとは思わないじゃないですか。「ええっ?!」ってなるのも楽しくて、そういうことをしています。

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どうやってそういうことを思いつくのでしょうか?

山根

うーん、自分に対してイタズラしたいって感じでしょうか。これまでの自分だったらやらないことをやって、自分も他人も驚かせたいという話。そもそも楽しいことやクリエイティブって、自分の能力や知識の限界のちょっと先で生まれると思っているんです。だから、いつも自分の能力や知識の限界がどこらへんにあるのかを知っておきたい。だけど、限界って目に見えなくて絶えず移動していくから、いつも確認しないといけないんです。そのプロセスでなんだか面白そうという感覚を拾っているんでしょうね。
限界を一つずつ丁寧に見つけて、それを超えるにはどうしたらいいんだろうと思って、本を読んだり、一人で考えたり、人と話したり。結果的にいろいろ新しいことをやることになります。
自分の外側にあって今までやったことないものにチャレンジした方が新しい発想になりやすいじゃないですか。そうなるには自分の境界がどこまで行ってて、何から先が分からないのかを知らないといけないですね。

これまでのうぉんじまの限界を超えてみると、みんなが面白がるのかな

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昨年は「うぉんじま」というMogicのゆるいキャラクターのグッズをたくさん作られていましたが、あれも関連しているのでしょうか?

山根

今の話と同じです。うぉんじまというキャラクターがいますと。ウォンバットと人間が組み合わさった謎めいたキャラクターで広報をやっている人のアバターという立て付け。ブログを書いているし、社内の認知もありそうだったけど、最近入ったインターンに「え、うぉんじまって誰ですか?」と印象が薄かった。さらに、知っている人は「うぉんじまさんってこうだよね」というイメージが出来上がってる。
そこらへんに、うぉんじまというイメージの境界線が見えたんですよね。その境界線を超えたら面白いんじゃないかと思って。これまではイラスト画像だけだったから、等身大のぬいぐるみにして目が光って吠えるギミック入れたら面白いかなとか、あとは粘土でデフォルメしたマリオネット人形をつくって寸劇できたら面白いのかなとか、インタビューで顔出しNGだからウォンバットのヘルメットを作ってあげると喜ぶかなという発想ですね。
これまでのうぉんじまの限界を超えると、みんな面白がるのかなって。やっぱり、一種の遊びですね。で、みんなイメージが広がって面白がってくれた。
境界を越えるのに、文章を書くし、絵を描くし、DIYするし、ミシン縫うし、編み物するし、映像を撮るし、機械作るし、なんでもやります。便利な道具はとりあえずマスターしたいので、あんまりアウトプットのベクトルが安定しないですね。

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さすがに針金の骨格から紙をはって毛並みを貼り付けて、ヘルメット型のかぶりものを作るとは思いませんでした。

山根

そこが境界線を超えているところでしょうか。みんながMogicにいてずっと飽きないというのは、去年のMogicより今年のMogicがちょっとずつ大きくなるところかなと。ビジネスとして成長したというのもあるけど、どんどん自分たちが新しいことを出来るようになるのが大きいんじゃないかな。
できないと思ってたけど、いつの間にかできるようになった。だから、自分たちを超えていくというプロセスにクリエイティブがあると思うんですけど、そこに関しては真面目なんじゃないでしょうか。うまくいったからといって、同じことはしない、くり返さないというやつです。

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それは一緒にはたらくものとして、いつもとても重いテーマですね(笑)。クリエイティブという分かりづらいテーマでいろいろお聞かせいただき、ありがとうございました!

山根

こちらこそ、ありがとうございました!

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