『自分たちの好きなように会社を作っていけばいい。
他と違ってても、普通じゃなくても、信じられることをやっていく。
信じられることって、案外と少ないものですから
そう、本当に愚直に、率直に、真摯にそれを探してきたんです』
2025.05.27
Mogicの社内がワサワサ、バタバタしていることはほとんどありません。
のんびりしてるといわれればそれまでですが、経営の視点でいえば「目の前の仕事に対応してない」からだと思っています。
今日のことを今日判断するんじゃなくて、はるか地平線上にある選択の可能性を今日考えておく。
「はるか先って、いつのことなの?」と問われれば「少なくとも半年、長くて数年、10年先に起きそうなこと」が答えになります。
前にも「桃栗3年、柿8年という体感」という記事でふれたようにとにかく長めにとらえています。
「じゃあ、なんでそんな先のことを考えるの?」と問われるなら「ベースはオプション取引のスキームを使ってるから、誰もがパッと判断できないような未来がいいんです」と答えています。
オプション取引、ちょっとなじみの薄い用語がでてきました。
分かりやすくするためにギリシャの哲学者タレスの話を引いていきます。
ーーーーー
オプション取引
https://w.wiki/EJEy
紀元前6世紀、ギリシャのサモス島にタレスという学者がいた。
彼は数学や天文学に通じ、紀元前585年に起きた日食を予言したと言われるが、貧乏をしていたので、ある者が「お前のその学問は、いったいなんの役に立つのか」と罵った。
そこでタレスは学問で実際に金を稼いでみせようと出かけていって、島の特産であったオリーブから油を搾る石臼を持っている男にいくらか金を払い、オリーブの収穫期に臼を借りる予約をした。
数か月後、その年のオリーブは大豊作になり、島の石臼はのこらず必要になった。
タレスは石臼を高値で又貸しして利益を得たという。
これが世界史上初のオプション取引とされる。
ーーーーー
おもしろいのは、未来にうまれる価値(オリーブの大豊作)を今日のちょっとした判断(いくらかの金)で予約できたということ。
「未来なんて分からないさ」と割りきるんじゃなくて、ありそうな未来に少しだけ賭けておく。
ちょっとだけ先取りして、ヘンゼルとグレーテルのパンくずのようにわずかなしるしを残しておく。
通る“はず”の帰り道のために、先に失っていいモノと後で得られるだろう価値を天秤にかける。
不確実な未来という無数の分かれ道を前にして、ほんのすこしのシグナルを受けとる。
まあ、まあ、そんな感じで格好をつけてしまいました。
きっと次のような反論があることでしょう。
「未来の分岐は膨大にあるから、全部は考えられないじゃないか」
「未来っていっても6ヶ月先なのか、24ヶ月先なのかで違うし」
「未来の3ヶ所に選択肢が3つずつで27通りって、検討だけで日が暮れる」
「小さなリソースを前借りしすぎると結果的にかなりの量になるじゃん」
「予想できないことが起きるんだから、考えるだけ意味ないよ」
「複雑に考えすぎて、動けなくなるんじゃないか」
「どうやればいいか、まったく分からないし」
そうです、分からないから大変なんです。
大変だからこそ、時間を見つけてはあれこれと想定してオプションを作り続けて来るべきときがきたら一つ一つ取りだして丁寧に検証するしかない。
可能性というものの前提として外れることが多いから、作ってから後で見直し、作っては見直しをくりかえす。
作りすぎてもダメだけど、作らなすぎてもダメ、だからひたすらに続ける。
次第につくるべきオプションとつくらなくていいオプションが見えてくる、はず。
無限にみえる取り組みの果てに(これを純粋持続というなら)、いつか直観と呼ばれるものにたどりつけるのでしょうか。
成果はさておき、こういうの嫌いじゃないのでついクセで作ってるようになったかな。
2025.05.19
社内あちこちから「余白を作って」「余力を考えて」「余裕を持たせて」と聞こえてきます。
もちろん精神衛生からいえば、ゆとりはいいものです。
しっかりと準備して、じっくりと進められますから。
ゆとりがあることで、自分たちらしく仕事を進められる。
なんて理想論をいうこともありますが、本質は現実的な対処から導かれたものです。
なぜ余白を作るのか?それがはたらく人だけのためじゃないとしたら?
答えは、組織の運営を自律的かつ自動的に補正するため。
そのための理論的な土台としてパーキンソンの法則を利用しています。
まずはイギリスの政治学者が提唱した有名な法則から
ーーーーー
パーキンソンの法則
https://w.wiki/mP8
元々は、英国の官僚制を俯瞰した結果として、官僚達が自分達の相互利益のために、仕事を作り出して行政運営を実施し、それに見合う部下を新たに雇い入れ、予算が得られれば得られた分だけ、官僚達が増長してゆく様子を示した法則であった。
パーキンソンの法則を一言で言うと、例えば、役人の数は、仕事の量とは無関係に増え続けるという説明が可能である。
具体的な法則としては
第1法則
仕事の量は、完成のために与えられた時間を全て満たすまで膨張する
第2法則
支出の額は、収入の額に達するまで膨張する
以上の2つから成る。
ーーーーー
端的にいうと「ほっとけば、あればあるほど使っちゃう」です。
もう少し会社の業務によせてパーキンソンの法則を改変してみます。
第1法則
個人において、仕事の量は勤務時間を全て満たすまで膨張する
第2法則
会社において、予算の費用額は予算の売上額に達するまで膨張する
この第1法則から導かれる予想解は
・最初は仕事量を抑えるが、経過するほど残業の確率が上昇する
・勤務時間がある限り、本当はもうしなくていい仕事を見直すことはない
とか
第2法則から導かれる予想解は
・売上が未達であっても、費用は予定どおりかさ増しされていく
・手元にお金のある限り、本当はしなくてもいい仕事を見直すことはない
とか
これら無自覚な膨張を危険だと思うなら、満杯であふれる前にリミッターをかけておくのが最善です。
今の器であふれるのなら、わざと少し小さい器を用意する。
小さい器が先に満ちることで、警報を鳴らすことができる。
普通の器が満杯になるまでに時間があれば、対策をたてやすい。
個人の家計でいえば「給料日のすぐ後に天引きして預金を積みたてる方法」に似ています。
天引きされたのちの給与、つまり小さい器でその月の生活をやりくりする。
小さな器でやれているうちは、うまくいっているとみなせる。
もしも小さな器からこぼれたなら、何かがおかしいと気がつく。
突発的なことで仕方ないなら、積みたてた余力をつかう方法もあるしと。
個人の仕事でいえば、はじめに「余力を考えて」予定を組んでおくと力を使いはたす前に誰かが気づいてくれる。
会社のお金なら、あらかじめ「余裕を持たせて」おくことですっからかんになる前にいらない仕事をやめられる。
そうです、余白とは単なるのんびりした雰囲気や働き方改革のためではないのです。
経営の観点でみればセーフティネットが立ちあがる装置、しかも組織というネットワークが自律的かつ自動的に補正をかける起点となっているのです。
2025.05.12
えいやと捨てる、思いたって捨てる、話しあって捨てる。
4月に組織を変えた勢いで、いらないものを捨ててみました。
あんまりモノはなかったのですが、たくさんあったのがデジタルファイル。
それも個人のフォルダというより、誰かとの共有フォルダのやつなんです。
自分のなら「あああ、あ〜いらないじゃん」と捨てられる。
だけど、共有フォルダにあるファイルだと「あの人、使ってるんじゃないかな」と忖度して手がつかない。
そんな見えない気づかいで積もりに積もったファイル、ファイル。
腐るわけじゃなくて、壊れるわけじゃないけど、どうにかしないとね。
というわけで、顔つきあわせて「これ、いいよね」「日付、古くない?」「なつかしいねぇ」とやってみました。
なんと、なんとの共有ファイル、9割近くなくなりました!
なんていうんでしょうか、こういうのが人にとって一番難しいんだなと。
「誰かが使うんじゃないか」「誰かに必要なんじゃないか」という憶測。
誰か、誰かといってるうちに生まれいづる“知らない誰か”。
その人を探してさまようばかりの、のっぺらぼうなファイルがぞろり。
おお、背筋も凍る怖い話になってきました。
こんな時、抜け出すにはひとつばかり。
うしろを振りかえらず肩よせあってそろり、しかないんでしょうね。