少人数+ソフトウェア+サーバやロボットの組み合わせで
新しい時代の会社経営を進めています。
そのプロセスの一部をこのコーナーでお伝えできればと思っています。
2022.07.04
化学用語に共鳴構造というのがあって、それをヒントに組織を作れないかと考えたことがありました。
共鳴構造とは、ある分子において原子同士の位置は変わらずに電子の位置だけ変化することでより安定する状態を指したものです。
ちょっと難しい表現になっていますが、以下を引用します。
1つの化合物について物理、化学的に想定される化学構造式が複数ある場合、それらの構造を重ね合せた状態を仮定して、分子は各構造の間で共鳴しているという。
略
分子はいくつかの構造の間を共鳴することによって、共鳴しないと考えた場合よりもエネルギーが低下する。すなわち分子が安定化する。
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チームを分子、人を原子、リーダーシップを電子と例えたときに、いつも誰かがリーダーシップをとるのではなくて、局面に応じてリーダーシップがチーム内で移動することで、いろんなストレスに対して弾力性が高まるのではないかというアイデアです。
しかしながら、ここで出てくる疑問は「人の間でリーダーシップが移動するなら、誰がそのリーダーシップの移動を決めるのか」ということ。
この回答は分子を見ればわかるように、原子同士が話し合っているわけでも誰かが決定しているわけでもなく、原子の特性と組み合わせがそうさせているので、それを参考に設計すればいいのではないかと。
Mogicらしい組織とは何かと議論していると、ひょんなところから発想をはぐくむタネが運ばれてきます。
2022.06.27
「自分を認めてもらいたければ、他人の存在を認めることです」
額から汗がしたたり落ちる坂道で、そのフレーズを思い出しました。
最初に聞いたのは学生の頃でしょうか。
今でもそれは難しいことだと感じます。
たいていは他人より優れていることで、自分の優劣を見定める場面が多いからでしょう。
テストでいい点を取り、偏差値で自分の位置を確認する。
部活でレギュラーになり、活躍して自分の居場所を見つける。
SNSで目立つ写真をのせて、フォロワーで自分の存在を感じる。
会社で分かりやすい実績を残して、出世して自分の価値を上げていく。
起業して良い業績をアピールし、キラキラした自分の姿をアップしていく。
これらは他人との比較の果てに自分を定めるのですから、最初から異なる世界を切りとる他人は認められません。
このフレーズが伝えたいことはおそらく、競争では得られない充足感が存在するということ。
他人を理解し慮らなければ、辿り着けないものがあることでしょう。
ぐっと汗を拭い、照り返すアスファルトにうんざりして仰ぎみる入道雲はオフィスの上に伸びています。
2022.06.20
人が二つのことを同時にできないということは、二重課題干渉の実験で知られています。
一つのプロセスが他のプロセスに干渉してしまい、ミスや遅延が発生するというものです。
資料を作りながら、別の電話にも出るというのは至難の業でしょう。
ところが残念なことに、会社という場所はいろんな仕事が次々にやってくるものです。
一つずつ順番がついていればいいのですが、たいていは何かをしていたら、別の何かが割り込んできます。
Aプロジェクトのアイデアを考えていたら、Cプロジェクトの進捗で相談を受けたり、今月中に健康診断を受けなさいといわれたり、打ち合わせ後にメールやチャットがたんまり溜まっていたり。
現時点で優先順位をつけても半日後には変わってしまうかもしれません。
では、どうするのがいいのか?
アイデアとしてはいくつか思い浮かびます。
プロセスの中にも干渉しやすいものとそうでないものがあるだろうから、しにくいもの同士で同時にこなす。
優先順位をきっちりつけると変化に弱くなるから、ゆるい優先順位をつける。
ガッツリ集中すると別のことが割り込んできた時にイライラするから、やんわり集中する。
どれがいいのかはさっぱり分かりませんが、とかく現代の会社は頭が忙しいことだけは確かです。
2022.06.13
変わりやすい空模様のころ、七十二候でいえば腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)に入りました。
蒸れた枯れ草から蛍がふわっと飛び立つさまを表現したものですが、都会では当然のように見かけることはありません。
暗い畦道で鈍く光って消えのぼるホタルを思い出しながら、そんなウェブサービスをいつか作りたいなあと考えるようになりました。
はっきりした照明、キラキラしたネオン、押せばシャットダウンするボタン、分かりやすく整理された情報。
それはそれでいいのですが、そうじゃない体験を作ったりしたいものです。
2022.06.06
電子回路とかIoTをつかった悪戯(いたずら)をしようと思って、ひさしぶりにプログラムを書いて、ちょっと動かして、あいかわらず途中でやめました。
高度な動作をさせたくて組んでいるというより、驚かせるのが目的なのであちこちのソースを組み合わせつつ作ればいいだけなんです。
途中でやめて気がついたことは、やめる直前に昔より取り組むものの難易度と悩むだろう時間がよく分かったことでした。
実際にやってみないと実測値はでませんが、後で答え合わせとして近しいソースを調べた時に予想とあまりずれていないなあと。
時間を気にせず、たっぷり時間をかけてもいいし、途中で止めてもいい。
そういう判断が必要なのが、自分にとって未知のものを学ぶときでしょう。
探索型学習とも呼ばれる、そのスタイルはとかく粘り強く続けることが強調されますが、案外うまく諦める力が大事なんじゃないかなと思っています。
2022.05.30
定期的にインターン学生から「休日は退屈で仕方ありません。趣味もないので、ダラダラして後悔します」という悩みを受けます。
本当に趣味がないのかなと思って聞いてみると、意外とそうではありません。
料理したり、お茶したり、買い物したり、散歩したり、マンガ読んだり、Netflix見たり、ゲームしたり、ネットしたり、バーベキューしたり、観光したり。
それらは趣味でもいいんじゃないかと思いますが、趣味じゃなく退屈も紛れないというので別の何かが引っかかっているようです。
ちなみに諸説ありますが、「余暇」という概念、週に2日以上休みがあるというのは産業革命後の1930年代に広まったといわれています。
そこから週末に遊ぶレジャー施設が作られ、山歩きする国立公園が整備され、バカンスで長期滞在するスタイルが作られていきました。
しかし思えばまだ100年の歴史ですし、日本ではもっと短いでしょう。
そうして今や常時オンラインでつながり、働く時間と楽しむ時間さえ区別が曖昧になってきています。
生き方の難易度が上がりつづけているなか、彼らにとって良い生き方とは何かと話し合いを続けています。
2022.05.23
ダ・ヴィンチのモナリザは、肌の透明感がすごいと聞いたことがあります。
普通の制作工程では考えられないほど、とても薄く透明に近い膜がいくつも重ねられているようです。
乾かぬ間に塗ってしまえば下の層と混ざり合いますから、数ヶ月待ってまた塗るという気の遠くなるような手間暇が透けてみえます。
塗って、待って、眺めて、考えて、また塗る。
最初に塗り始めて、絶えず変化する考え方を重ねていきますから、思考の変遷も相当なものだったんだろうなと。
こんなに長くかけることはできませんが、1つのプロジェクトの最初と最後で考えがどのように変わっていったかを記録することがあります。
最初の気持ち、途中の感じ方、到達した考え、後に振り返ったときに見えるもの。
自分にとって良い変わり方と悪い変わり方があって、無意識でぼやけていた限界がきれいに透けてみえるようになったら万事OKです。
2022.05.16
週末に小型ヨットの講習に行って久々に長いこと固いデッキや椅子に座ったせいか、腰がカチコチになりました。
あわせて覚える用語やするべき動作が多いので、頭もパンパンです。
そもそもヨットには二つの帆があり、それに連動したシート(ロープ)を加減し、片手で舵(ティラー)を操ります。
天気は刻一刻と変わり、風は小刻みに振れて、いく先の波を感じ取らねばなりません。
自分が操作すると要素が多くてうまく変化できず、流れに乗り切れないことばかり。
少し慣れてきて、ふとした瞬間にうまくはまると風に乗ったようで楽しくなってきます。
これが動力で進む船にはない、自然との一体感なんでしょう。
そうしてやっぱり、手探りで感じて変化していくところが起業と似ているんだなあと思います。
クライアントのかすかな声、新しい市場のまたたき、消え入りそうなお金、必死にくらいつく努力。
あれもこれも上手に反応しなきゃいけないと思っても、大概はうまくいきません。
ひたすら感じるままに風に乗れる瞬間を求めていくしかないのです。
数年前に子会社を作りはじめたのは、一緒に働くメンバーにそういう経験をしてほしいと考えたからでした。
遠くから眺めていたり、誰かが操縦している船に乗っても味わえない感覚。
今も自分たちの小さなヨットで漕ぎ出して、あらゆることに合わせようとしてもがいています。
雨が強くても波が高くても前を向いていますから、いつの日かうまく風をとらえてくれることでしょう。