『自分たちの好きなように会社を作っていけばいい。
他と違ってても、普通じゃなくても、信じられることをやっていく。
信じられること、それって案外と少ないものですから
そう、本当に愚直に、率直に、真摯にそれを探してきたんです』
2022.07.19
とっちらかっていて整理しようとするとき、いろいろ考えます。
ラベルをつけてカテゴリ分けしたり、経験に従って必要なものだけに絞ったり、データをとって法則を見つけたり、進化系統のようなツリー状にまとめたり、近しい要素を取り出してメタファーで表現したり。
生活空間のように物理的な制限があればそれで事足りるのですが、人にとって無限に近しい情報なら話は違ってきます。
15世紀から始まる大航海時代はまさにそのような混沌とした状況で、新大陸からもたらされた莫大な情報は新しい着眼点となったようです。
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ルネサンス 情報革命の時代
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074744/
ルネサンス期の記憶術が目指したのは、情報をいわば「トポグラフィカル」に統御することであった。つまり、個々の情報が置かれた位置・場所が、全体構造のなかでしかるべき意味を持つことで、個と全体の関係が直感的に把握可能となるようなシステムこそが、理想とされたのだ。
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けれどもこのように知を固定配置しながら管理していく方法は、やがて情報の無限増大という現実に対処できなくなっていく。
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むしろ発想を逆にして、世界像とは観察者が、観察できた範囲の経験から構築してゆくもの、という考えが主流となる。
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あるキーワードに沿って、何万、何十万というカードを検索し、必要なもののみを抜き出し、組み合わせることによって、その都度、一回限りの、意味のある知のリンクないしは情報の束が抜き出されることになる。
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その場で、一回限りの意味のある知恵を取り出す。
会社を経営したり、ITサービスを作ったりする面白さは、こんな形で情報の折りたたみ方を探究できるところだったりします。
2022.07.11
ITでシステムを作るには、一般的な手順があります。
要求仕様、要件定義、ユーザーインターフェイス設計、データベース設計、画面ワイヤー制作、インフラ構築、HTMLモックアップ、コーディング、画面組み込み開発、単体テストとか。
ごく当たり前のプロセスであって、疑いようがありません。
個人的にはこれだけだと退屈に思うので、演出というパートを入れます。
同じく会社で仕事をするには、一般的な方法があります。
資料作成、会議、議事録、報告/連絡/相談、スケジュール管理、タスクリスト、目標設定と進捗確認、コミュニケーション、リスク対策、リーダーシップやフォロワーシップとか。
そのままやってもいいのですが、同じく演出という名目で組み直します。
じゃあ、演出とはなんだ?という話になるので言葉にすると「効率の視点では意味がないけど、みんなが楽しい気持ちになれるから、まあいいや」という定義です。
Mogicにはその状態を表す言葉があり、まじめとふまじめの間として「おふざけ」と呼ばれています。
入社した当初はまじめすぎて、慣れてくるとふまじめすぎて、1年ぐらい経つと自然と良いおふざけになりますから、文化のなせるワザなのでしょう。
2022.07.04
化学用語に共鳴構造というのがあって、それをヒントに組織を作れないかと考えたことがありました。
共鳴構造とは、ある分子において原子同士の位置は変わらずに電子の位置だけ変化することでより安定する状態を指したものです。
ちょっと難しい表現になっていますが、以下を引用します。
1つの化合物について物理、化学的に想定される化学構造式が複数ある場合、それらの構造を重ね合せた状態を仮定して、分子は各構造の間で共鳴しているという。
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分子はいくつかの構造の間を共鳴することによって、共鳴しないと考えた場合よりもエネルギーが低下する。すなわち分子が安定化する。
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チームを分子、人を原子、リーダーシップを電子と例えたときに、いつも誰かがリーダーシップをとるのではなくて、局面に応じてリーダーシップがチーム内で移動することで、いろんなストレスに対して弾力性が高まるのではないかというアイデアです。
しかしながら、ここで出てくる疑問は「人の間でリーダーシップが移動するなら、誰がそのリーダーシップの移動を決めるのか」ということ。
この回答は分子を見ればわかるように、原子同士が話し合っているわけでも誰かが決定しているわけでもなく、原子の特性と組み合わせがそうさせているので、それを参考に設計すればいいのではないかと。
Mogicらしい組織とは何かと議論していると、ひょんなところから発想をはぐくむタネが運ばれてきます。
2022.06.27
「自分を認めてもらいたければ、他人の存在を認めることです」
額から汗がしたたり落ちる坂道で、そのフレーズを思い出しました。
最初に聞いたのは学生の頃でしょうか。
今でもそれは難しいことだと感じます。
たいていは他人より優れていることで、自分の優劣を見定める場面が多いからでしょう。
テストでいい点を取り、偏差値で自分の位置を確認する。
部活でレギュラーになり、活躍して自分の居場所を見つける。
SNSで目立つ写真をのせて、フォロワーで自分の存在を感じる。
会社で分かりやすい実績を残して、出世して自分の価値を上げていく。
起業して良い業績をアピールし、キラキラした自分の姿をアップしていく。
これらは他人との比較の果てに自分を定めるのですから、最初から異なる世界を切りとる他人は認められません。
このフレーズが伝えたいことはおそらく、競争では得られない充足感が存在するということ。
他人を理解し慮らなければ、辿り着けないものがあることでしょう。
ぐっと汗を拭い、照り返すアスファルトにうんざりして仰ぎみる入道雲はオフィスの上に伸びています。
2022.06.20
人が二つのことを同時にできないということは、二重課題干渉の実験で知られています。
一つのプロセスが他のプロセスに干渉してしまい、ミスや遅延が発生するというものです。
資料を作りながら、別の電話にも出るというのは至難の業でしょう。
ところが残念なことに、会社という場所はいろんな仕事が次々にやってくるものです。
一つずつ順番がついていればいいのですが、たいていは何かをしていたら、別の何かが割り込んできます。
Aプロジェクトのアイデアを考えていたら、Cプロジェクトの進捗で相談を受けたり、今月中に健康診断を受けなさいといわれたり、打ち合わせ後にメールやチャットがたんまり溜まっていたり。
現時点で優先順位をつけても半日後には変わってしまうかもしれません。
では、どうするのがいいのか?
アイデアとしてはいくつか思い浮かびます。
プロセスの中にも干渉しやすいものとそうでないものがあるだろうから、しにくいもの同士で同時にこなす。
優先順位をきっちりつけると変化に弱くなるから、ゆるい優先順位をつける。
ガッツリ集中すると別のことが割り込んできた時にイライラするから、やんわり集中する。
どれがいいのかはさっぱり分かりませんが、とかく現代の会社は頭が忙しいことだけは確かです。
2022.06.13
変わりやすい空模様のころ、七十二候でいえば腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)に入りました。
蒸れた枯れ草から蛍がふわっと飛び立つさまを表現したものですが、都会では当然のように見かけることはありません。
暗い畦道で鈍く光って消えのぼるホタルを思い出しながら、そんなウェブサービスをいつか作りたいなあと考えるようになりました。
はっきりした照明、キラキラしたネオン、押せばシャットダウンするボタン、分かりやすく整理された情報。
それはそれでいいのですが、そうじゃない体験を作ったりしたいものです。
2022.06.06
電子回路とかIoTをつかった悪戯(いたずら)をしようと思って、ひさしぶりにプログラムを書いて、ちょっと動かして、あいかわらず途中でやめました。
高度な動作をさせたくて組んでいるというより、驚かせるのが目的なのであちこちのソースを組み合わせつつ作ればいいだけなんです。
途中でやめて気がついたことは、やめる直前に昔より取り組むものの難易度と悩むだろう時間がよく分かったことでした。
実際にやってみないと実測値はでませんが、後で答え合わせとして近しいソースを調べた時に予想とあまりずれていないなあと。
時間を気にせず、たっぷり時間をかけてもいいし、途中で止めてもいい。
そういう判断が必要なのが、自分にとって未知のものを学ぶときでしょう。
探索型学習とも呼ばれる、そのスタイルはとかく粘り強く続けることが強調されますが、案外うまく諦める力が大事なんじゃないかなと思っています。
2022.05.30
定期的にインターン学生から「休日は退屈で仕方ありません。趣味もないので、ダラダラして後悔します」という悩みを受けます。
本当に趣味がないのかなと思って聞いてみると、意外とそうではありません。
料理したり、お茶したり、買い物したり、散歩したり、マンガ読んだり、Netflix見たり、ゲームしたり、ネットしたり、バーベキューしたり、観光したり。
それらは趣味でもいいんじゃないかと思いますが、趣味じゃなく退屈も紛れないというので別の何かが引っかかっているようです。
ちなみに諸説ありますが、「余暇」という概念、週に2日以上休みがあるというのは産業革命後の1930年代に広まったといわれています。
そこから週末に遊ぶレジャー施設が作られ、山歩きする国立公園が整備され、バカンスで長期滞在するスタイルが作られていきました。
しかし思えばまだ100年の歴史ですし、日本ではもっと短いでしょう。
そうして今や常時オンラインでつながり、働く時間と楽しむ時間さえ区別が曖昧になってきています。
生き方の難易度が上がりつづけているなか、彼らにとって良い生き方とは何かと話し合いを続けています。