少人数+ソフトウェア+サーバやロボットの組み合わせで
新しい時代の会社経営を進めています。
そのプロセスの一部をこのコーナーでお伝えできればと思っています。
2021.05.17
「将来にむけて、どういうビジョンや戦略を考えていますか?」といわれて、はたと困ることがあります。
こうなったらいいなという方向はあるものの、プレゼン資料にまとめることもなければ、発表会をすることもないからです。
方向性はざっくりと「21世紀の半ばごろに役立てるように、まず教育にアプローチ」だったり、「はたらく人が自分の仕事に充実感を持つ」だったり、「関わる人に希望を持ってもらえるようにする」とか、たくさんあります。
それ以上に細かいものはありませんから、話すことがないのです。
一般的には、KPIとか戦略、戦術、ミッションとか、ビジョンが必要とされますが、なくていいかなあとここまでやってきました。
組織がそこまで大きくないから、それでもいいんだよという意見もあるでしょう。
しかしながら、組織が小さくても揉めたり、うまくいかないときはうまくいかなくなりますから、少し違う気もしています。
そんなモヤモヤにしっくりくる文章があったので引用します。
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数学する身体
https://www.shinchosha.co.jp/book/339651/
人間が人工物を設計するときには、あらかじめどこまでがリソースでどこからがノイズかをはっきり決めるものである。
この回路の例でいえば、一つ一つの論理ブロックは問題解決のためのリソースだが、電磁的な漏れや磁束はノイズとして、極力排除するようにするだろう。
だが、それはあくまで設計者の視点である。
設計者のいない、ボトムアップの進化の過程では、使えるものは、見境なくなんでも使われる。
結果として、リソースは身体や環境に散らばり、ノイズとの区別が曖昧になる。
どこまでが問題解決をしている主体で、どこからがその環境なのかということが、判然としないまま雑じりあう。
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もう一つよく質問されて困ることがあります。
「どうして年齢や国籍が違うダイバーシティというか、多様性を目指されたのですか?」です。
答えは「目指したんじゃないんだけど」なのですが、さすがにガッカリされそうなので、少しだけ格好をつけた返答をします。
石神井という場所で心地よく参加してくれる人を募ってきたら、こうなってしまった、であって設計通りではなく、適応の結果なんです。
ある時点で立てた戦略が時間とともに無効化されるを眺めているのか、戦略を正当化するためにノイズを排除するのか、それとも戦略を小刻みに変え続ける戦略なのか。
どうにも自分一人で抱えるには大きすぎて、多彩な情報があちこちに流れているので、うまく「戦略」を作れないようです。
2021.05.12
20代で働いていたころ、周囲から「30代半ばになるとプレイヤーとして現場で活躍するのは限界だからマネジメントの練習をはじめないとな」と言われてきました。
なんとなく腑に落ちなくて、本当にそうなのかなあと思いながら、30代で新しい分野の会社を立ち上げ、現場でも働いて40代になった頃、世の中では人生100年時代といわれるようになっていました。
人生100年時代のベースにあるのは、ずっと学びつづけて、新しい可能性を模索して、長く働くということかと思います。
その点からいけば、現実問題としての異分野への参入障壁はさておいて、途中に何度でも新しい業種や職種、現場にもマネジメントにもチャレンジしてもいいということになります。
実際、もし35歳からマネジメントだけに専念すれば、定年が70歳だとすると35年もマネージャでありつづけるので、個人的にはなかなか窮屈だなと。
一方で、「ずっと学びつづけて、新しい分野に挑戦しつづける」のはちょっと重荷に感じるかもしれません。
そんなにトライばかりが人生じゃありませんよ、という人もいるでしょう。
ですから、インターン生にも伝えているオススメが一つがあります。
とりあえず1日1つだけ新しいことをはじめて、1年後にその記録を振り返ってみるのです。
毎日に少しのうるおいが出ますから、やってみるのは悪くはありません。
大それたことをする必要なくて、コンビニで食べたことのないスイーツを買ってみるもよし、左手でフォークをつかってみるもよし、新しいサービスを使ってみるもよし、使ったことのない言葉を口にしてみるもよし。
それでも1年分だと、365個のリストができてきます。
そうしてから、今一度考えてみてはどうでしょう。
365個もリストがあれば、何か1つぐらいは新しいことへのスタート地点になるものです。
2021.05.06
持続的な社会に必要とされる3つのRとして、リデュース・リユース・リサイクルがあります。
ゴミになりそうなものをはじめから減らすリデュース、同じものを何度も使うリユース、回収して新たに素材を作るリサイクル。
目に見えるモノでは考えやすいのですが、目に見えない資産ではどうなるのでしょう。
会社において目に見えない資産で代表的なものは、ブランドやサービス、ノウハウやチームワーク、マネジメントやカルチャーがあります。
まずは「これらにどうムダが発生しているのか」を判断しないと動けませんから、そこを考えていきます。
ムダになったブランドやサービス、ムダに感じるノウハウやチームワーク、ムダをうむマネジメントやカルチャー。
Mogicでいえばシンプルで「はたらく人や関わる人が満足しやすいものかどうか」で、ムダかムダじゃないかが決まってきます。
はたらく人が仕事をして満足感を得られないようなサービスはやめて、効率的だけどはたらく人が成長できないようなノウハウは持たず、関わる人が首をかしげるマネジメントは必要ありません。
かつて有効だったけど今では貢献できなくなった例として、オフィスでのイベント運営があります。
コロナ禍でみんなが集まって楽しさを共有したイベントはなくなり、オンラインチャットと動画配信を軸とした新しい表現にうまれかわりました。
あとは過去に出したサービスでも将来性が見えなくなったら解体して、その知見を次のサービスに組み込んだりしてきました。
提供サービスをやめるのも一つの方法だといえます。
持続的であるということは静的にも感じられますが、絶えず自分たちの仕事に価値があるかを見直すという意味でダイナミックなものなのでしょう。
2021.04.26
エンジニアが作ってくれた採用応募ツールが便利なので、ちょこちょこ見ていたら年間500人ペースで面接があることに気がつきました。
この石神井の変な会社にそんなに応募があるなんて……と自分でも驚きます。
コロナ禍でほとんどの面接がオンラインになり、より多くの人と会えるようになったからでしょう。
オンライン面接、オンライン商談、オンライン飲み会、オンライン修学旅行、オンライン授業、オンライン留学。
たった1年で「オンライン風のもの」が増えました。
当然以前と比較すれば、それでも物足りないところがあり、直接会えないこと、好きな場所にいくことが制限されています。
しかし、100年前なら「情報すらないか、情報が届くのが遅い」状態でしょうから、少しはマシな気がしています。
IT技術をビジネスに使う者として、次に何か起きた時に何ができるかを考えるキッカケになりました。
人が所属する組織構造と組織内の伝達方法が100年前からさほど変わっていないケースだと、情報経路がオープンで莫大な量になっていると組織自体が軋んで悲鳴をあげかねないと。
太古の昔から飢餓には強かった身体が、急に飽食の時代に入り新しい問題を抱えてしまったようなものです。
組織は情報の集合体ともいえますので、組織外を含めた情報の流れ方が変われば、それに適応した組織作りが必要です。
でも、組織は前の人から脈々と何かを引き継ぎますから慣性の力の方が強く、突発的なことでもなければ変わる潮目にはならないでしょう。
だからこそ、どうすべきなのか?
とても難しい課題ですぐには答えがでなさそうなので、凪いでいる平時にしっかりメンバーと話し合っておきたいと思います。
2021.04.19
交差点で青信号を待ちながら、もし30秒以上前に戻り、角を曲がる前に赤信号で止まることになると分かっていたら自転車のスピードを落としていただろうかと考えていました。
待つと分かっていたら、急がずにゆっくり漕いでいたでしょう。
カーブミラーでもあれば多少先の様子は分かったでしょうが、未来の状態を知る手段がなければ現在持っている情報で行動を最適化します。
近い未来どこか目的地に向かう場合に、機械が経路の未来ステータスを把握してくれていれば、アシストでずっと青信号のまま到着できるように思います。
やがて買い物も、料理も、掃除も、家計簿も、投資も、副業も、動画投稿も予測されて最適化が進めば進むほど、生活がアルゴリズムに近づいていきます。
事前に予想された膨大な分岐から最適な答えが選ばれることで、どんどんスムーズさは増してきます。
ただしアルゴリズムは万能ではなくて、現状に最適化しすぎるでしょうから外部の状況が変化したときにアップデートされなければ致命傷になります。
赤信号と青信号の切り替え時間が変更されたことを知らずにアシストを受けているようなものです。
そこでアルゴリズムによって便利になった生活をしながら、アルゴリズムの土台となる部分が変化していないか気を配る必要がでてきます。
さらにアルゴリズムがこっそり悪意のあるものに変更されていないかと注意を払うことも大切です。
誰かの良かれが、自分の悪かれになってしまう場合だってあります。
再びペダルに足を乗せつつ、別に青信号ばかりの生き方じゃなくて、たまに赤信号で止まるのもありだよなあと。
2021.04.12
オフィスにある植物の植え替えや剪定をはじめる季節になりました。
ぶらりぶらりと植物をみてまわり、だいぶ大きくなったなあとか、弱ってるかもとつぶやきながら、屋上まで運んでいきます。
ゴールデンウィークが近くなると晴れる日が増えますし、半袖で作業すると少し汗ばむぐらいでちょうどいいものです。
石神井の近くに珍しい草木を扱っているお店があるので、ついつい日ごろ見ないような植物を揃えてしまいます。
最近は植木鉢で質感のいいものがふえたので、こだわって買うと植物より高くなって、あららということに。
今年はパンパスグラスが弱ってしまいました。
お化けススキという俗称もあるぐらい、大きな穂をつける植物。
もともとブラジルやアルゼンチンなど南米生まれで、観賞用に明治期に入ってきたようです。
オフィスに大きなススキがあるとおもしろそうだったので数年前に購入したのですが、日光が大好きなので室内ばかりで次第に元気がなくなりました。
光を求めてベランダ付きの部屋に譲り、育成してもらうことにしました。
枯れた長細い葉を切り取り、根の張り具合を確かめ、土壌をどう調整するか考えてくれるでしょう。
そんな感じで、いろんな植物に手をいれながら1年の成長をふりかえっています。
もちろん植物のある部屋ごとに、メンバーの成長も自然と感じられるものです。
2021.04.07
会社を作る前に、商工会議所や省庁で行っている起業や経営に関するアンケートを見ていました。
ざっと見ると会社の悩みは大きく3つあり、新規顧客を開拓できない、いい人材を採用できない、資金繰りが大変というもの。
それはそうだろうなと思うとともに、なぜこの3つに集約されるのかを考えていました。
資金繰りが大変だから、いい人材を採用できないのか?
新規顧客を開拓できないから、資金繰りが悪いのか?
いい人材がいないから、新規顧客を開拓できないのか?
相互に影響を与えているといってしまえばそれまでになりますので、自分たちに役に立つ情報になるようにもう少し深めていきます。
A)新規顧客を開拓できない、B)いい人材を採用できない、C)資金繰りが大変という3つへの対策を想定するとして、C)の資金が足りないのは当面お金を使わなければいいだけ、B)のいい人材が採用できないは、当面自分が頑張ればいいだけ。
残るのはA)新規顧客の開拓となります。この課題さえなんとかすればいいということです。
ただし、ここまできてようやく自分が「新規顧客」というものをきちんと分かっていなんだなと気がつきました。
単語以上にその中身が分かっていなくて使っているのです。
新規顧客という単語は売り手の視点で見たものでもありますから、本当は契約する相手がもっと良くなるイメージを想像しないといけないなあと。
そうしてまた新しい課題が生まれます。
契約したくなる期待値とは何か?
契約した後の普通の満足度とは何か?
普通以上の満足度とは何か?
普通以上の満足度がずっと続くのがいいのか? など
会社経営は好きなだけ自分たちの課題を作ることができますから、それが楽しくもあります。
2021.03.24
引き算シリーズというテーマがあって、「当たり前」から「最も重要そうなこと」を引いてみて何が残るか、ということを考えたりします。
あんぱんから、あんを抜いてみたらどうなるかといった具合です。
ただのパンになるのか、エアあんぱんになるのか、を考えるのは自由です。
資本主義から前年比の売上高や四半期目標を引いたら、どうなるかを考えた本があったのではじめに引用します。
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マイノリティ・デザイン
https://wrl.co.jp/2020/12/25/minority-design/
子どもの頃から、僕は数多くのクリエイターたちに救われてきました。
中略
でも、いざ社会に飛び込んでみると、あらゆる業界の「クリエイター」と呼ばれる職種の人たちが疲れていることに気づきました。
その原因は、持てる才能を経済が食い尽くそうとしているからです。
中略
けれども一方で、みんな気づきはじめていると思うんです。
前年比10「1」%の売上、「四」半期目標達成といった数字をクリアするのが、すべてではないことに。
労働人口は減少し、国内市場が縮小し、さまざまな格差が拡大する中、短期目標をクリアすることだけに僕らが全力疾走しても、息切れして潰れるだけだということに。
ある後輩が、こんなことをつぶやいていました。
「資本主義って、いったいどこを目指してるんですかね?」
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「資本主義」 ー 「売上や利益」 = 「マイノリティの大切さに気がつく」という一つの回答です。
売上や利益はほっとくと効率性の点からマジョリティへのフォーカスと近似しますから、マイノリティへの配慮は少なくなりがちです。
SDGsのような設定があえて必要な理由もそこにありそうです。
特に答えがあるわけではないのですが、「人生」から「夢」を引いてみたり、「社会」から「自分の権利」を引いてみたり、「会社」から「社長」を引いてみると、見えていそうで見えていなかったものに気がつくものです。